世界から四角く切り取られた箱の中は、壁も天井も床もシミ一つなく真っ白だった。
箱の中には少女以外存在するものはなかった。唯一申し訳ない程度に壁の一部が四角く切り取られている。
しかし、それはノブも取っ手もなく、少女からは開くことは出来ない。
世界から隔離された小さな世界で、少女は音もなく存在していた。
何もない真っ白な空間を見ているのか、見ていないのかよく分からない状態で瞼を開いていた。
少女の体はここにあるにもかかわらず、少女の
彼女の精神は、霧散するように散らばっていた。あらゆる
そして、少女は夢を見る。長い長い夢を見る。決して叶わないと知っている夢に、少女は繰り返し思いを馳せる。
ここには少女以外に何もなかった。
夜の人気のない筈の倉庫街に、2人のレベル5が対峙していた。
学園都市第3位 御坂美琴は右手をまっすぐ伸ばし、レールガンを撃つ構えをした。
対して、学園都市最強のレベル5 一方通行はただそこに立っているだけだった。
得体の知れない相手に対して、恐怖に震えながら御坂は一方通行に疑問をぶつけた。
「こんなイカレた計画に協力する理由は何!?あの子に恨みでもあったワケ!?」
一方通行は一度口を閉じ、ゆっくりと開いた。
「理由?理由ねェ。そりゃぁ」
彼は右手を天にゆっくりと伸ばし、固く拳を握りこむ。それはまるで届かない何かを手にするような仕草だ。
「絶対的な力を手にするため」
白い少年が求めるのは誰も敵わない、誰も届かない絶対的な存在。まさに、神と呼ばれるに等しい存在。
彼は愚直なまでに信じている。最強ではまだ易い、更にその上の存在になればきっと子供の頃に誓った約束を守れるはずなのだと。
一方通行は忘れることが出来なかった。愚かしいほど疑わなかった未来。
「レベル5だとか学園都市で1位だとかそンなつまンねぇもンじゃねぇ。俺に挑もうとする事すら許さねぇ程の絶対的なチカラ。『無敵』が欲しーンだよ。お前もレベル5なら分かンだろ?」
――――でなけりゃアイツを『自由』にしてやれねぇンだよ。アソコから出して、護ってやれねぇと意味がねぇンだよ。そのためなら何だって犠牲にしてやンよ。例えこの『世界』が敵になったとしてもなァ――――――
世界を知らない子供の約束は、悲しいほどに険しく、恐ろしく遠かった。あの頃の一方通行は知らなかった。
真っ白な部屋が、人の欲望と罪で出来た世界の底だという事を。
一方通行が求める人が抱える闇が、どれだけ深いのかを。あの部屋は真っ白なんかじゃなく、真っ黒に塗り潰された世界だった。
それでもあの時感じた思いは、嘘偽りなく今の彼を動かす唯一の原動力だった。
真っ黒な世界の底で、唯一光のように眩しくて優しい人。一方通行の中で、神にも等しい唯一の存在だった。
「何よ・・・それ・・・ゼッタイテキなチカラ?ムテキ?そんな・・・そんな事でっアンタはっそんなッ」
だから御坂の言葉は、一方通行には届かない。怒りに打ち震えている彼女を見て、それでも彼は揺るがない。
彼女の怒りは一方通行には届かない。彼には、もう一度逢いたい人がいる。
「そんなモノのためにあの子を殺したのかーーー!!!」
人間の目には捉えることの出来ない速さで、超電磁砲が一方通行に迫り来る。
しかし、一方通行は避けるわけでも防御するわけでもなく微動だにせずただそこに立っていた。
どんな攻撃が来ようと、彼の優位は変わらない。変わってはいけない。
彼はたった一人のために、
2015/03/12 再投稿
2011/02/14